安保真と本物との出逢い
安保真の創り出す作品は
一般的な墨絵ではなく、墨と水が織りなす「にじみ」を
独自の技法を駆使し、新しい「滲み画」へと昇華させました。
墨と水との融合、そこに安保のアイデンティティが加わることにより
唯一無二であり無限の表現を可能にします。
安保真の描く作品に数多く登場する【シマフクロウ】は
彼の出身地でもあるサロマに生息し
絶滅危惧種にも指定されている天然記念物。
アイヌ文化では村を守る神として崇められている存在です。
その崇高で神秘的な魅力が「滲み画」という独自の方法で表現されています。
私は仕事柄、書や現代アートに触れ合う機会が多く、今までもたくさんのアーティストの
作品と出逢ってきました。今回はそんな筆者が安保真についてお話しします。
彼との出逢いは、今から約10年前のこと。当時、私はIT関連業務を中心としており、
常にモニター越しに無機質な情報と向き合う毎日でした。
そんなある日、知人に連れて行かれた個展で、
初めて彼の作品の前に立ったときの衝撃は今でも鮮明に覚えています。
なんと表現すればよいのか、いや、言葉ではとても表現できない感覚。
最初に頭に浮かんだのは「本物だ・・・」という直感。
今思えば、一度も見たことが無い作品を見て、
なぜそう感じたのかは不思議の一言につきます。
世界中に存在する数多(あまた)の芸術作品に出逢ったとき、人は百人百様、
さまざまな感想を持つでしょう。それが、芸術の魅力であるのですから。
私にとってそれは「本物」だったのです。
本能で感じたといえば大袈裟かもしれませんが、
彼の描く「滲み」が私の心に焼きついた出逢いの瞬間でした。
筆者自身、安保真の
ここが凄いところは?
と聞かれたら間違いなくこう答えるでしょう。
「墨と水、これを自由自在に操り、
喜びや悲しみだけでなく、
あらゆる心情を表現できる作家」と。
また代表作はどれ?
という質問をよく受けます。
彼は今までに数え切れないほどの作品を創ってきましたが、
彼自身が満足できない作品は世に出さないと語っています。
代表作とは、作り手だけでなく鑑賞する人が最も魅了された作品がそれにあたるのでは
ないでしょうか。
「この作品が代表作だから…」より、実際に自分の感覚で「この作品が好き」でいいじゃないでしょうか。
無論、世の中の数多くある芸術作品をすべて鑑賞することはまず困難。
いわゆる代表作と呼ばれる作品から入るっていうこともアリだと思います。
つまり芸術に対して固定概念に縛られず自由でいることが大切だと思うんです。
もっともっと彼の作品を見てください。滲み画の魅力を感じてください。
きっとあなたの感覚にビビッとくる作品に出逢えるはずです。
アートライター 近 藤
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